中国から伝わり室町時代に広まった納豆は、大豆由来のたんぱく質が豊富で、納豆菌から作られるナットウキナーゼに健康促進効果があるとメディアが取り上げたこともあり、一九九〇年代には健康大国日本の食卓に欠かせない一品となった。大粒、小粒と好みがあるだろうが、近年の主流は小粒と極小粒である。極小粒は生の状態で直径五・五ミリ以下のもので、このサイズの大豆を発見し納豆を作ったのは、「天狗納豆」創業者の笹沼清左衛門氏である。茨城県に流れる那珂川流域で栽培されている極小粒の大豆を発見し、明治二十二年に販売を開始した。ちょうどその年は小山と水戸を結ぶ水戸線が開通された年であり、お祝いムードの地元民と偕楽園などへ向かう観光客で賑わいをみせ、極小粒納豆は人気を博すこととなる。その結果、観光客の口コミで全国的に広まり、水戸名物と呼ばれるようになったわけだ。その極小粒納豆の味と伝統を守るために天狗納豆は「水戸元祖」を屋号に冠したという。こうして今では茨城の名物として知られる水戸納豆の特徴は、粒が小さいことと、わらに包まれていることだ。わらに包まれた納豆のにおいはまろやかであり、食感はパック入りのものより固くなる。また、極小粒は表面積が広いので粘りが強く、生醤油を入れるとさらに粘りが増して旨みがじわじわと出てくるので、納豆好きにはたまらない一品である。